不思議なドラム缶

この前知り合ったＤＪに招待券をもらったのでクラブへ行ってきました。

そんなんでなきゃクラブなんて縁がないです。僕。

行ったのはいいんですが、何せ不慣れなもので、突っ立っているしかすることがありません。
大体クラブミュージックなんてものよく分かってません。
ハウスが何だソウルが何ださっぱりで、ＤＪがやってるものはみんな
ハウスだとか思い込んでいたりする失礼なヤツなのです。
結局、そのクラブでやるのはＲ＆Ｂだとか、ソウルだとか、
そういうものらしいです。

僕ときたらロックと歌謡曲しか分かりません。ごめんなさい。

で、まあ、客層もまあ、きれいなお姉さま方やかっこいいか
なんだかよく分からないけど
とにかくそういう格好したお兄さま方がたくさん集まって
盛り上がっておられます。

僕はといえば、退屈です。
せめてどっかのバンドのライブだったら楽しめたと思います。

居場所に困って人々を観察していると、
群衆の只中に投げ込まれた２本のドラム缶に目が留まりました。

このドラム缶等はどうもカップルのようです。

お互い腰や肩に手を回し、直角にひじを曲げてこぶしを握り、
ひじから先だけをＤＪに合わせて振っているのです。
足、腰、首などの部分は直立不動です。ドラム缶だから仕方ありません。

その場をもてあましていた僕の好奇心はすべてその２本に奪われて釘付けです。

ドラム缶のオスのほうはワゴンセールで買ったらしい３００円くらいの
オレンジのＴシャツに霜降りＧパン。
Ｔシャツのすそをご丁寧にＧパンの中にきっちりしまい込み、
靴は１９８０円の合成牛革に金色の金飾り付き。
左の腰には黒いウエストポーチ、銀縁めがねという、
自分がアウトローであることを全身で表現しています。

メスのドラム缶は髪を後ろにゴムで留め、あずき色のサマーカーディガンの下には
どうやって着たのか分からないチェックのワンピース。もちろんミニ。
黄土色のハイソックスにサンダル。肩からかけた白いバッグは
スーパーの２階婦人服売り場に売ってる９８０円。

オスのほうがちょっと背丈が短いというおまけ付き。

横幅はどっちもどっちの見事なドラム缶っぷり。

いったいどこの８０年代からやってきたこの２本？

過去から未来へ、時空を超えて不法投棄された産業廃棄物です。

時空警察に通報してやる。


いやあ、いい暇つぶしになりました。
あれ、まさかハロウィンのコスプレじゃないよね。
まだ時期が早いけどＴシャツオレンジ色だったし。


とってもとてもとても写真に撮りたかったけど暗くて撮れなかった。

オフィシャルの写真撮ってたカメラマンさんいたけど、
彼の感性にはハマらなかったらしくドラム缶は避けて写してた。

いや、本当だって、本当にいたんだって、うそじゃないって。
ＴシャツのすそＧパンの中に入れて、ウエストポーチくっつけて直立不動で腕だけ振って、
そんな不思議なドラム缶が２本。
そんなの２１世紀には、しかもクラブになんかいないって俺だってそう思うよ。
でもいたんだって！作り話じゃなく。
あのイベントに来てた人なら誰でも知ってるはず。
ものすごく目立ってたから。
ゲストのＤＪよりも目立ってた。